町会って必要なの?

 年々減少する加入率。存続の危機を危ぶまれ、ときおりメディアにも扱われたりする町会。入会するメリットがわからない人の方がほとんどかもしれません。今年度より役員をやらせてもらっている身としてあまり大きな声で言えることではありませんが、正直なところ現代社会において、今の町会の在り方では意義はそんなにないのかもしれません。

 しかし、全く意味がないかというとそうではなく、そこに価値を見出している方は一定数いて、SNSなどでは出会えない人のつながりを持つことができ、地域社会が豊かになるのは確かです。ただ、現代においては人とつながれる術が増えたため、わざわざ町会でなくても、より自分に合う仲間を見つけることはできます。

 その昔の社会は物質的にも不安定であり、阿佐谷に至っても闇市に溢れ、食品も不足していたので、生きる上での助け合いというのは、非常に必要性が高いものでした。そんな話も町会で知り合った先輩方より生の歴史として知ることができるわけですが、そうは言ってもやはりそれは当時の価値観であり、成熟した今の社会にとっては却って近所付き合いから生じるシガラミなど、面倒臭いことの方が頭に浮かびがちです。趣味が合う仲間たちがいる場に好きな時にログインして、飽きたタイミングでログオフできる環境の方が心地は良いのです。

 では、改めて町会は必要なのか?と問うと、必要だと考えます。しかし、必要とされる対象に段階はあります。向こう5年から10年くらいまでの間は、今、町会にいる方々を主体として機能させておく必要があります。まちの中での大切な役割であり、居場所だからです。その間に少しずつフェードしながら、今の社会に合った形にもしていかなくてはなりません。

 新しい世代に対しては、もしかしたら町会という形でなくてもいいかもしれませんが、役所の方々や警察、消防、議員…また、その土地の地主さん等とつながることができ、住んでいるだけで立場(信用)を持つことができる環境はなかなかありません。

 世代や職種、趣味を超えた雑多な個が集える共同体というのは、今後ますます個々への最適化が進む社会において、稀有な環境となっていくかと考えます。そういった場に人を集わせるためには一定の信用力が必要です。それを住民主導で行える機能、すなわち町会は活かせた方がいいと今は考えます。

 「シルバー民主主義は2030年に完全終了する仮説」をジャーナリストの佐々木俊尚さんが音声メディアで唱えられて、密に地域で活動していると説得力ある話だと感じています。生存曲線という時間経過に従って個体数がどのように減ってゆくかの統計を用い入り、それによる日本の人口構成の変化を伝えています。年齢による存命率の話では、70歳では全員存命。70歳代なかばで男性8割、女性9割の存命率。80歳には6割となり、90歳は2割と変化していくそうです。2030年は団塊世代が全員80歳になるので世論の形成の仕方が変わるのではないか、という仮説です。

 そうなると、世の中の当たり前がガラリと変化する可能性があります。地域の制作物や企画をよく請け負っていると「シルバー民主主義」という言葉はとてもしっくりきます。今の高齢者にわかりやすい媒体で、わかりやすい企画・デザインを求められます。それがダメだ、ということではありません。一見して伝わるというのはデザインの本質の部分でもあります。しかし、今の社会に対するわかりやすさを追求してしまうと、たった数年後には「つまらない」「物足りない」ものとして、世の中に受け取られてしまう可能性は大いに出てきてしまいます。

 例えばの話、ブロックチェーンを活用した分散型自律組織、DAOなんかの概念をまちの共同体に用い、地域貢献した分に応じて、給食費無料や託児サービス、仕事の受託など…それぞれに必要な公的支援、社会保障を選んで受けられる権利に換えられる仕組みが生まれたらどうでしょう。

 「そんなことができるの?」と思われるかもしれません。しかし、町会とは元々ボトムアップでまちをつくる仕組みなはずなのです。私たちがいつもあるいている中杉通りや季節を彩るけやき並木もまちの人たちで作られてきました。まちの所々を注意してみてみると、そんな功績が随所に残されています。

 これまでは、戦後の整備からバブルや家族編成の変化に伴うマンション需要の増加などで、ハードに対してのまちの働きがありました。成熟し、モノからココロへと豊かさの定義が移った現代ではソフトをどんどん充実させていかなくてはなりません。

 繰り返しにはなりますが、町会には本来、ボトムアップでまちをつくる力があるはずなのです。約6年後にまたガラリと社会が変わるタイミングで、これからの世代がよいと思うまちの土台があるのか、ないのか。そんな土台を、また新たな仕組みでつくるのか、もしくは今ある仕組みをアップデートさせるのか。

 書き出してみると小難しい話になってしまいましたが、とにかく住む地域で挨拶し合える人がいるというのは、とても心地のよいものです。疲れて心が塞がってしまったときも、何気ないすれ違いからの挨拶で少し元気をもらえるものです。それは、どんなに社会が変わっていっても不変なことだと思います。それをベースに、そんな共同体に関わることでそれぞれにプラスを得られたり、現在社会で欠けてしまったことを補完するようなことができれば、また十分に価値のあるものになっていけると思います。

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