ネイバーズグッド《2024年9月号》祭りがつなぐ人と街「阿佐谷七夕まつり」を終えてほか

あとがき(代表コラム)

「活動」と「仕事」と「労働」と


 地域活動には一種の中毒性があると感じています。人から必要とされ、役に立つことができ、褒められる機会も多いです。時には注目も浴び(るようにし)たりします。正直、とても心地よい。

 しかし、本当に地域のためを想い、対峙する課題の改善、もしくは自分自身のキャリアや人生の成功を目指すのであれば、ぬるま湯に浸かっている自分に気がつかなくてはなりません。

 ある時、本を読んでいて知ったドイツ出身のユダヤ人、ハンナ・アーレントという哲学者がいます。彼女が1958年に発表した『人間の条件』という書籍の中で、私の指針となっている考え方があります。

 人間が存在するためには、「労働」「仕事」「活動」の3つの要素が不可欠だといいます。

 「労働」とは、食べ物を摂取したり、眠ったり、生きていく上での生命維持をするための手立てです。そして「仕事」とは、生産する行為を指します。素材を加工して物や構造を作り出すことなどです。最後に「活動」とは、他の人間と関わりを持つ中で公共的な問題を解決していくことと、説きます。

 課題の解決に向け、継続的に「活動」をし続けるためには、この3つのバランスがとても大切だと考えます。3つのうちのどれか、ではなくこのバランスです。

 生き方、働き方が比較的自由に選べるようになってきた現代において、「やりたいことだけをやっていきたい(やっていけそう)」、もしくは、「やりたくないことはやりたくない」という、want toの軸で生き方の選択ができるようになったゆえに、自由だけど不幸せ、そんなケースを最近よく見るように感じています。

 「活動」はしたいけど「労働」はしたくない。何かを生産するスキルを持ち合わせていない、もしくはその質が低い。

 それだと、どんな立派な志があろうと食べていくことはできません。

 実は最近、ネイバーズグッドに対する考え方が少し変わってきています。これまでは「活動」を「仕事」にすることができれば、地域と恒常的な関わりができるのではないだろうか、と思い、それを目指していました。約3年間、休むことなく本気でがんばってきた結果、お陰様である程度のところまでは来ることはできました。が、恐らくここらで限界なんだろうと感じています。

 やっぱり、「活動」は「活動」であり、「仕事」は「仕事」、「労働」は「労働」なんだと思います。

 「活動」からお金を捻出することができることはわかりましたが、やはりどうがんばっても並の人件費以上のお金をそこにつけることは難しいです。稀なケースで、その「活動」が評価され、大きなお金がつくこともあるとは思いますが、それはノーベル賞だとか、そういったもののような気がします。アートとデザインの違いにも似ているように思います。

 弊社の理念としては、貢献する人が疲弊しない社会です。今のがんばりの先に、この理念の実現はないと感じます。なので、がんばり方を変えなくてはなりません。

 ウェルビーイングなり、求められる豊かさがモノからココロの充実に移った今の社会において、「活動」はとても魅力的に映ると思います。それは否定しませんが、やはりまだ資本主義というルールが変わらない以上は、「仕事」と「労働」から目を背けてはいけないと思います。

 冒頭の繰り返しになりますが、地域活動は人から必要とされ、役に立つことができ、褒められる機会も多いです。なので、その「活動」についココロが動いていってしまいますが、それがあなたの将来を豊かにするものとは限りません。


Index ネイバーズグッド《2024年9月号》
Topicks
祭りがつなぐ人と街「阿佐谷七夕まつり」を終えて
「第二回あさがやまちづくりセッション」実施しました
震災に備えてつながるカフェ企画中!

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