ネイバーズグッド《2025年5月号》新たな仲間達とつくる地域プロジェクト「すぎなみU30ミーティング」とは ほか

あとがき(代表コラム)

これからの地域活動の考え方とその価値

 特に今年に入ってから、人様の前に立たせていただき、私たちの活動を伝えさせてもらう機会が増えてきました。私たちとしても全くの道半ばで、何を成し遂げたわけでもありません。なので、大変おこがましく、加えて人前で話すことは実はとても苦手ではあるのですが、いつしか読んだ本の教えに従って、引き受けることにしています。

「人前で話すことを避けていては、成長はない」

『道をひらく』松下幸之助著

 人間は、人前で話すことによって、自分自身を鍛えることができる。話すことによって、自分の考えをいっそう明確にし、また、新たな考えを生み出すことにもつながる。
 人前で話すのを避けていては、自己の成長はおぼつかない。だから、どんなに未熟でも、どんなに話が下手でも、すすんで人前で話す機会を持つことが大切である。

というようなことを書かれています。

 やはり話す機会をいただけることで、聴いてくださる方々に何を得ていただけるかをよく考えます。話を聴いてくださる対象となるのは「地域活動に興味がある方」と「ビジネスに興味がある方」と、主に二種類の機会があります。なので、同じ内容でも切り口は変えています。前者に「お金」の流れの話はピンときませんし、後者に「地域への想い」を伝えても得られることはありません。

 「想い」と「お金」。そういった一見、相反する要素から一つの私たちの活動を考え続け、話をさせていただいたり、行動したりといったアウトプットを重ねていくことで、「地域(社会)活動」において得られることと、「地域(社会)活動」によってどうやって、社員を含めた生計を立てるかが少しずつ、整理できてきたように感じています。

  • 社会資本
  • 人的資本
  • 金融資産

 お金にならないと言われている「地域(社会)活動」をし続けるのにあたって、糧となっている3つの柱の考え方です。「地域(社会)活動」によって、金融資産はなかなか直接的に結びつけることができません。だから、続けることが困難であり、善い「想い」を持ついくつもの団体が解散を余儀なくされてしまう現場を見てきました。

 「地域(社会)活動」によって得られるのは「社会資本」になります。そして、活動をし続けるためには、活動によって得た「社会資本」を、いかに「金融資産」に「換金」するか。そこに一種のノウハウや経験が必要であると考えます。「社会資本」の「換金」方法はあまり知られていないように感じます。私たちも生活と活動を成り立たせるべく、必死にもがいてきた中で気が付くことができました。

 再び本からの引用となりますが、山口周氏の著書「人生の経営戦略――自分の人生を自分で考えて生きるための戦略コンセプト20」より、人生というプロジェクトの原理の図解が端的で明快です。

山口周| 著作家・独立研究家
電通、BCG 等で企業戦略策定・文化政菓立案・組織開発・風土改革等に従事。中川政七商店、モバイルファクトリー社外取締役。主な著書に『クリティカル・ビジネス・バラダイム』『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?』『武器になる哲学』など

(PIVOT 公式チャンネル)【人生の経営戦略】能力よりポジショニング

 「社会資本」「人的資本」「金融資産」の3つの柱の考え方は、元々私は、橘 玲氏の著書「幸福の「資本」論―――あなたの未来を決める「3つの資本」と「8つの人生パターン」」より、知りましたが、山口氏も同じくこの3つの柱を軸にウェルビーイングを捉え、そこに「時間資本」を直接投じられる導線も描いてらっしゃいます。中でも興味深いことが、「人的資本」は直接の「金融資本」にはつながらず、間に「社会資本」が不可欠とされている点です。(橘氏と山口氏とで「金融」において資産と資本を使い分けてらっしゃいますが、ここでは割愛)

 この図解を以って考えてみると、「お金」を稼ぐことにおいて特に日本人はどこか、「時間資本」を使って「金融資本」に繋げる思考が強いように感じます。山口氏は「時間資本」を投じて向上できるものは「人的資本」しかないと説きます。そして「社会資本」も案外、「時間資本」を投じて直接得られるものではない画を描いています。

 話は戻って、気になる「社会資本」の「換金」についてですが、ようやく最近コツを掴んできたように感じます。直近の事例を挙げるなら、阿佐谷ジャズストリートの30周年記念誌制作プロジェクトになります。このプロジェクトにおいては実は、「そんな予算はない」という理由で当初は反対をされていました。しかしながら、このタイミングで作ってカタチにしておかないと、立ち上げられた方々の想いが時代の経過と共に失われてしまう危機を感じ、あらゆる提案を重ね、クラウドファンディングならぬ、ローカルファンディング…いわゆる地域の寄付をリターンを提示した上で募ることで、予算を確保することができました。結果としてまとめると非常にシンプルな話ですが、これは阿佐谷ジャズストリートという「社会資本」がないと成し得ないことでした。

 他にも現在展開中の阿佐ヶ谷飲み屋さん祭り。そのコンセプトや飲み人口の減少といった時代の変化もあり、チケット販売の売り伸ばしはなかなか難しい課題ではあります。ここ数年の間、イベント制作を担当させていただく中で、告知期間を伸ばしたり、掲示板等でのポスターやSNSでの露出を増やしたりと試行錯誤を重ねてきました。しかし、それらはあまり売上とは関係はないという結果を得て、単に「接点」の問題だと思いました。これまで開催日のみに展開していた券売所を、今回からは前売りからも設けることにし、さらに券売所の数自体も増やしています。

 券売所を増やすことで、その場所とスタッフの人数の課題が浮上します。そこでこれまでの活動から得てこれた「社会資本」が解決の糸口となります。商店街や企業からの協力を得て、普通であれば借りられない、もしくはコストがかかる場所をお借りすることができ、これまで取りこぼしていた導線での潜在参加者との「接点」を作ることができました。スタッフにつきましては、実行委員からの呼びかけや公募を経て、たくさんの協力者に集まっていただくことができました。

 これで、チケットの売上を上げることができれば「社会資本」が「換金」されたことになります。売上が上がれば、飲み屋さん祭り参加店舗への分配率向上や、スタッフたちのつながりを深めるための打ち上げのレベルを上げられ、そして、イベントの知名度が上がることで関わってくださった方々の「社会資本」をまた上げる、という好循環が生まれます。

 そんな飲み屋さん祭りはまだ開催前のため、結果はまた来月号以降のお楽しみ。

 最後に。弊社ネイバーズグッドは、特にこのコーポレートメディアにおいては「地域(社会)活動」の面が強く出てしまっていますが、会社を支えているのはデザインというスキル、すなわち「人的資本」です。「地域(社会)活動」をし続けるために、限りなく高いクオリティーのデザインの提供を目指し、日々磨きをかけています。(弊社におけるデザインの定義は、グラフィックやWebといった平面のものに限らず、「人」と「人」との関係や環境も含みます。)「活動」のために「仕事」を疎かにしてしまう方がいたりしますが、それは結局「活動」のためにはなりません。「仕事」を疎かにすることで、「社会資本」を損なってしまうし、「人的資本」も向上させられません。

 このように、自分が今、どの「資本」を得るための行動をしているのかを認識してみると、色々とうまく回ってくることがあるかと思います。


Index ネイバーズグッド《2025年5月号》
Topicks
新たな仲間達とつくる地域プロジェクト「すぎなみU30ミーティング」とは
「第24回阿佐ヶ谷飲み屋さん祭り」始まります!
ネイバーズグッド、ネクストステージへ

月間インフォメーション
今月のネイバーズ募集
デザインワークス
今後のスケジュール

あとがき(代表コラム)
これからの地域活動の考え方とその価値

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