ネイバーズグッドが「防災」に関わる理由

 私たちは年間を通じて、数々の地域イベントを企画制作、運営をさせていただく機会に恵まれることができております。イベント自体を成功に収めることはもちろんのことでありながらも、会社としては実現させたいビジョンとしては最終目的ではありません。

 現代において希薄になりつつある「助け合いの地域社会」を再構築すること。その究極の試金石が、災害時の助け合いにあると考えています。

 遡ること2023年。関東大震災100年目にあたるその年に「防災士」の資格を取得しました。これまで、まったく関心を示していなかった世界だったのですが、ふと参加した地域の防災訓練に大きな不安と危機感が走ったことで、その勢いで勉強をし取得しました。
 具体的な当時の不安と危機感とは、まず、参加者がほぼシニアであること。そして、語弊を恐れずに伝えると、助けられる側しか訓練に参加されていない状況がありました。また、訓練といえども私たちが行ったことは、一般参加者へお土産として配布する防災食の仕分けやトランシーバーのテスト…といったようなもので、実践的な内容は消化器訓練、ロープワーク、火災時を擬似再現した煙体験テント…と、消防署ありきで行われたものでした。また、これだけの震災が相次いでいる昨今であるのに、約35年前ほどの私が小学生のときに受けた内容とほとんど変わりがなかったことに驚いてしまいました。

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 また、その時期には「地域活動」における偽善感を抱きつつありました。褒められやすく満たされやすい。その環境はとても心地の良いものです。
 しかしながら、恒常的な地域サポートをする術を確立させるために独立した中で、「仕事をやった感」は得られても、自分の生計を立てられていない状況において、なんだか間違った方向へ進んでいる、そんな気持ちを感じずにはいられませんでした。

 「自己満足」であると同時に「自己犠牲」な状態でありました。

 切に求められていることは確かではありましたが、目先の困りごとの解決やイベントの実施を目的としては長くは続かないし、根本的には何も変えることができず、終いには自分が年老いたときに却って同じ問題を地域に引き起こしてしまうのではないだろうか、と思いました。

 「地域活動」を行ない続け、人と人、企業や団体との関わりしろをつくり、スケールさせ、属人化させず仕組みとして課題解決を目指す。そのためのツールとして、イベントがあり商店街、町会のサポートがある、そんな視点を持つ必要を感じていました。立場を超えた地域の助け合いが必要となる究極なケースが災害にあると結びつき、先の防災訓練の危機感と重なったわけです。

 地域の防災訓練では参加者がお客さんとなるケースがほとんどだと思います。しかしながら、ここ日本において度重なる震災の中で下記のようなデータがあります。

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 情報ソース元は本記事下記となりますが、こんな知識を「防災士」の試験を通して得るわけです。消防や自衛隊などの「公助」はわずか1.7%に過ぎない事実があります。TVの報道とかを見ていると、救助隊に助けられている画が映りますが、あくまでそれはメディアが現地に行ける状態になってからの状況であって、生存者の98%は公的機関の到着前に救出がされています。
 決して、公助の能力が低いというわけではなく、どう備えど、想定を超える大震災では物理的に無理があるのです。震災時には、被害者になると同時に救助する当事者に十分なりうる。それを知ったときに、防災訓練における捉え方が全くかわりました。

 そして、杉並区の消防署は杉並消防署と荻窪消防署の2つの本署と10箇所の出張所が配置されています。そして災害拠点病院も荻窪病院と杏林大学医学部附属杉並病院の2箇所を中止とし、11箇所の病院が災害拠点連携・協力病院となっています。

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「関東大震災型」では最悪2万3000人近くが死亡

 冬の夕方に発生して風速8メートルの風が吹く場合の最悪の想定では、死者については津波の約3500人、火災の約1万3000人、建物崩壊の約6300人などを合せて2万3000人近くにのぼり、負傷者は約8万6000人に達する。災害関連死も最大で約3万3000人という想定だ。建物の全壊と焼失は約41万4000棟、半壊は約47万3000棟と想定された。停電は最大で約1600万軒と全体の約5割に及び、完全復旧には1カ月以上かかる。情報通信分野への被害も大きく、固定電話・インターネット回線は最大で約750万回線に支障が出て、震災後の通信や連絡への影響は避けられないという。

引用元:日経ナショナル ジオグラフィック

 そんな想定と併せて、内閣府では首都直下地震は今後30年以内に発生する確率は70%という数字を公表しています。

 すっかり防災おじさんの力説となってしまいましたが、でもやはり、これだけの危険に日々直面している事実は認識する必要があるかと思っています。

 そこで、本題に立ち返るわけですが、こういったことを念頭に社会貢献や地域イベントというものを捉えると、「若いのにえらいね」といった褒め言葉は別にあまり響かなくなります。むしろ、そんな言葉の裏にある先輩の方々の事態の認知を感じるようになります。

 しかしながら、わかってはいても面白くないのが防災訓練の常。起こってほしくないことであり、あまり直視したくありません。なので、来るべき危機のために、お祭りという「ハレの場」の運営に参加いただくことを密かな訓練と捉えています。(参加者にはその場を楽しんでいただくことを第一としてもらいたいので、公には口に出してはいませんが)
 「人流の誘導」、会場設営での「テント貼り」、そして世代を超えたボランティアチームを束ねる「リーダーシップ」。これらはすべて、震災時にそのまま転用できるスキルになっていきます。酔っ払いやクレーマーを笑顔で誘導できる人は、パニックになった避難者を安全に導くことができます。イベント運営という場を通して、実は極めて実践的な「防災訓練」を繰り返している意識で現場をこなしています。

 なによりも年間さまざまなイベント運営を行わさせていただく中で、リピート参加いただけるボランティアさんとの関係と連携は、地域防災においてとても心強い仲間となります。

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  • データ(救助実態)の一次出典
    • 日本火災学会「1995年兵庫県南部地震における火災に関する調査報告書」
      • 阪神・淡路大震災において、生き埋めや閉じ込められた人が「誰によって救出されたか」という調査データの出典です。多くの自治体や消防庁の資料にて引用。
  • データを引用・掲載している公的機関の資料
    • 東京消防庁:「阪神・淡路大震災から学ぶ自助、共助の大切さ」
    • 大阪市 危機管理室:「市民防災マニュアル 第4章 地域での防災活動に参加しましょう」
    • 福岡県 大川市:「自助・共助・公助の連携と協働」
    • 京都府 長岡京市:「自助・近助・共助・公助」
  • 「7:2:1」の法則や背景に関する解説・分析
    • 永松伸吾(関西大学教授):「阪神・淡路大震災から20年、共助を軸としたあたらしい防災へ」(SYNODOS)
    • 「7:2:1」という数字が、救助実績だけでなく、林春男教授(京都大学)による「被災者の生活場所調査(自宅で生活した人が約7割)」にも由来している経緯などが詳しく解説されています。
    • 包括的研究報告:「震災時における自助・共助・公助の役割分担とその定量的根拠に関する包括的研究報告」
    • 救助実態の数値と、政策理念としての「7:2:1」の定着過程についてまとめられています。

直近のネイバーズグッドの防災活動

震災に備えてつながるカフェ@ケア24成田

 11月11日には杉並区地域包括支援センターのケア24成田さんご主催による、地域交流企画の一環における防災コーナーの企画、実施を担当させていただきました。主に普段あまり外出されないご高齢者向けに、在宅避難時の知識共有や、ご近所さん同士の顔見知りをつくるキッカケづくりをケア24成田さんと「震災に備えてつながるカフェ」として取り組まさせていただいております。

 どうしても縦割れがちになってしまう 「防災」と「福祉」。横断してみると、とても現実的な課題に遭遇します。「防災」では一般セオリーとされていることが、案外無理があるとこに気がつきます。杉並区では、自宅に損傷がなければ、在宅避難を推奨され、東京都でも最低3日分の備蓄品を用意しておくことを勧めていますが、そもそも3日分の水を購入することが困難であり、日常的にインターネットも使ってないため、amazon等での買い方もわかりません。また、1日あたりのトイレの回数も、一般的には1日5回ほどと想定しますが、80歳、90歳の高齢者は10回かそれ以上と、コミュニケーションをとって初めて知ることが多いです。

 本企画にあたって、参加者さんとのコミュニケーションツールとして、東京都より発行された「東京防災」より抜粋した防災クイズを制作しました。

 実際に出題してみると、ケースバイケースなことも多く、一概に言えない部分もあったので、アップデートが必要そうです。また、ワークショップとして行った新聞紙スリッパ。手のひらと足の裏から一番体温が放出されてしまうといいます。なので、あり物で簡単に作れ底冷えする避難所の体育館等で重宝します。が、このイベント中ずっと履いて講座を行っておりましたが、耐久性に欠け、歩きにくさもあり、却ってご高齢の方には向かないこともわかりました。情報と実際には乖離があるため、有効と勧められている情報を試してみる、というのも十分な訓練になるように思います。

震災救援所防災訓練@杉並第一小学校
 11月15日には杉並第一小学校震災級援所連絡会にて一般の方々向けにの防災訓練を行いました。震災級援所連絡会というのは自治体指定の救援所(主に小学校)近隣の町会や福祉施設、企業、病院、行政…などからなる地域防災組織。所属先の会長に恵まれ、時代に合わせ変化を厭わず、かつ連絡会員に無理のない範囲で少しずつアップデートを重ねられております。緻密に設定された役割配分より、その準備にかかる負荷の大きさは察するところです。

 コロナ禍の際には、一般の方へ向けた訓練は中断。そこから少しずつまた開いている過程にありますが、やはり一般参加者はどうしてもお客さんになってしまいがち。なので、「主催している私たちも行政の人間ではなく、みなさんと同じ近隣に住む住民であり、あなたたちも救援所の設営、運営を担っていただく可能性は十分にある」ということをお伝えすると、活発な質問につながり、その質問より私も勉強になりました。

災害時に真価を発揮できる「つながり」をデザインする

 「楽しいイベント」と「真剣な訓練」。一見対照的なこの二つですが、弊社にとっては、どちらも「共同体を機能させる」ための等しい手段です。 平時の楽しいつながりがあるからこそ、有事の仕組みが血の通ったものとして機能する。 イベントで培ったボランティアたちのリーダーシップが、避難所の混乱を収拾する。防災のために日々の活動がある、というわけではありませんが、「つながり」づくりや共同体の維持、構築は、究極的には災害時に真価を発揮するものと考えます。

 正直なところ、地域イベントの企画、制作は生業にはなりにくいです。ビジネス的に考えるのであれば、切り捨てるべき事業です。しかしながら、自己満足を越えた社会的意義まで持っていくとこで、会社にとっての地域イベントは社会資本になり、より大きな金融資産を生むための大変貴重なリソースとなります。

 会社的にはそんな意義を持って「防災」に向き合っています。


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