あとがき(代表コラム)
社会貢献か自己顕示か
5月は各団体、企業の総会のシーズンです。お陰様で関わらせていただく団体も広がり、そういった席に出席させていただく機会が増えてきました。総会というのは、先立って役員や理事会内で議論し、取り決めた方針の承認を得る場であり、議決権のないイチ会員のイチ意見では基本的に変えられることはできません。また、役員側としても、決めた方針の再考を迫られたくない、そして、円滑に穏便に終わらせたい…そんな空気が漂っており、なかば形骸的な場に時間を拘束される非合理を感じずにはいられません…が、私としても株主総会を実施する立場もあり、双方の心情を感じながら、なるべく出席するように努めています。
さまざまな組織の総会の場に出させていただくと、 議案や財務諸表等の書類には表れることがない、その組織のあり方を垣間見れることができることに気がつき、なかなか面白い場である、と思うようになりました。
「大義」か「体裁」か。特にその部分は明白に表れるように思います。
弊社も先日、株主総会を開催し、第四期の実績、決算報告と、今後の方針を示させていただき、株主のみなさんに承認をいただきました。役員、社員たちのがんばりで黒字決算で締めることができました。お陰様で二期連続での黒字。クライアントのみなさまをはじめ、日頃ネイバーズグッドを支えてくださっている全てのみなさまに感謝申し上げます。
人と人との関係や、俗に言う「まちづくり」のソフトの部分というのは、なかなか数値化しにくい世界です。ネイバーズグッドの収益構造としても、「まちづくり」自体においての金銭的収入はほとんどなく、その土台となる「仕事」にお金がついています。
『助け合いの地域社会へ』という「大義」を掲げ日々活動し、地域の現場から感じている切実な課題と、その解決に向けた私たちの行動やその時々の判断の結果が、決算書という成績表として表れたとき、改めて「まちづくり」というものについて考えさせられます。
「地域活動」と「儲け」は、どこか水と油の関係で、いつも相いれません。私たちのような視点での「地域活動」や「まちづくり」に対して面白くないという方もいらっしゃるので、伝え方にはとても気を遣います。しかし、私たちが対峙している地域の課題というのは、イチ団体やイチ企業の活動だけで解決できるスケールの話でないと感じています。
活動されている一人一人の「想い」はとても素敵なものです。しかしながら、果たしてそれが本当に地域のことを考えての「想い」なのか、はたまた自己顕示のためなのか。褒められやすい分野のゆえ、当事者としても盲目になりやすい部分であると思います。
「儲け」を出す、ということは本当に大変なことです。なので、おのずと高い目標設定と覚悟、創意工夫が必要です。「儲け」をしっかり出すことで、まちに貢献する側が疲弊しない生活を作り出し、新しいことにチャレンジするための原資にもなります。そして、「儲け」により納めた税金は、私たちでは叶えられないスケールでの「まちづくり」へとつながり、社会を前に進めてもらう。それが社会貢献の基礎としてあるべきではないか、と思います。そこを目指していれば、自己満足や自己顕示といった欲を制することができるように思います。
金銭的な見返りを求めないその精神はとても素敵なことであり、大切なことであると思います。「活動」においても「ビジネス」においても、貨幣を目的とした始まる関係よりも、「想い」が起点となって始まる関係の方が断然よいです。
問題はそこから先で、「想い」から始まり、「想い」だけでつなぎとめ続けると徐々に拗れてきます。「想い」でつながったら「お金」から目を逸らしてはいけません。
「お金がないからなるべく安く」というのが、地域活動の常套句。地域貢献を引き換えとする値切り交渉や無償ボランティアのお願いはよく受けますが、地域貢献を引き換えに予算をつくる提案や営業、もしくは価値の取引の場面にはあまり出くわしたことはありません。基本的には、地域貢献の大義の下での一方的なテイクであることが多く感じます。
地域という共同体は不可欠でありながら、その維持、形成は人の「気持ち」に依存してしまっており、また、そうでなければならないという価値観に縛られてしまっているように思います。人口減少、多文化共生はこの先、避けられない未来です。情報量と処理の高度化や、無形のモノに価値を定義する力も求められます。今回のTopicksの一つ「地域の魅力は地域がつくる」でも触れましたが、地域づくりを裏側をサポートし、まちを支えるエリアマネージメントを、なんとか職業として成り立たせられないものか。地域の主役になるのではなく、その地域に住む人たちの小さな声をまとめ、具体化し、実現させるプレイヤーを目指したい、という選択肢を若い人たちに与えられるようになっていけたらと想い描いています。
Index ネイバーズグッド《2025年6月号》
Topicks地域の魅力は地域がつくる
「第八回阿佐谷薪能」苦渋の決断
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