あとがき(代表コラム)
公益を考える
「公益」とは何か。辞書を引けば、「社会一般の利益。公共の利益」とあります。対義語は「私益」。言葉としてはわかりやすい。しかし、実際にその意味を自分の言葉で説明しようとすると、とたんに輪郭がぼやけていきます。
正直に言えば、今もまだ掴みきれていません。
ただ、最近その問いと向き合う機会が続いています。このご時世に珍しく、新たな商店街を発足させるというプロジェクトに関わらせてもらっています。また、昨年度より公益社団法人の役員にも任命いただきました。「公益」という言葉が、日常の中で以前より確かな重さを持って迫ってくるようになりました。
創業してから6期目を迎えた今、ネイバーズグッドがここまで続いてきたこと自体、ありがたいことだと感じています。中小企業白書(2017年)によれば、日本における起業後5年の企業生存率は81.7%とされています。しかし、これは法人全体のデータです。ベンチャー企業に限ると5年後の生存率は15%ともいわれており、まちづくりや地域貢献を軸に据えた事業となればなおさら、存続すること自体が容易ではないことは身に染みてわかります。
創業当時、経営に長けた先生方から「それは経営とは言えない」と評価を受けたり、今でも「それは商売ではない」と自身で事業を営んでいる先輩から厳しく言われたりします。今読み進めているファーストリテイリング・柳井正氏の著書から、「経営」と「商売」はまた別物であるということを学んでいる最中ではありますが、当時の自分には、その言葉の意味すら正確には理解できていなかったと思います。それでも、続けてきました。続けてこられました。
その経験を経て今、「公益」と「私益」の関係について、自分なりの考えが少しずつ形になってきています。白か黒かではありません。自分たちの生活の安定があってこその公益であり、公益があってこその自分たちの利益です。相乗関係にある、というのが正直な実感です。
そしてもう一つ、最近強く感じていることがあります。AIによる生産性向上が急速に進む中で、それを使いこなせる人とそうでない人との間で、私益を得る力の格差はますます広がっていくでしょう。個人が効率よく利益を手にしやすい時代になればなるほど、逆説的に「公益」という概念の重要性が増していくように思います。
これまで「公益」は「私益」の対義語、あるいはその延長線上にあるものとして語られてきました。しかし、これからの時代においては、私益と公益は対立するものでも、どちらかから派生するものでもなく、並行して意識し、同時に追求していくべきものではないでしょうか。人の営みとして、その両方を意図的に設計していく必要が、今まさに生まれてきていると感じています。
納税という行為一つをとっても、それは公益への直接的な貢献であり、利益を出し続けることが、地域への還元につながっていきます。ネイバーズグッドが掲げる「助け合いの地域社会へ」というミッションは、善意や気持ちだけでは支えられません。持続可能な事業の土台があって初めて、そのミッションは生きていきます。
商店街の発足に関わりながら、公益社団法人の一員として動きながら、私が感じるのはその一点に尽きます。「公益」とは、誰かが高尚な理念として掲げるものではなく、日々の事業の積み重ねの先に、気づけば形になっているものなのかもしれません。まだ答えは出ていませんが、その問いを持ち続けることが、今の自分にできる最も誠実な姿勢だと思っています。
Index ネイバーズグッド《2026年4月号》
Topicks
商店街と共につくる、阿佐ヶ谷のまちの縁
あさがやまちづくりセッション登壇を終えて
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