2026年5月9日、阿佐ヶ谷神明宮の能楽殿で「第九回阿佐谷薪能」が開催されました。昨年は悪天候により本編の中止を余儀なくされた公演。1年越しの開催に、お客さまも実行委員も「今年こそ」という期待を胸に当日を迎えました。天候にも恵まれ、満員御礼。400名以上の観客が能楽殿を囲みました。

人間国宝の狂言と、篝火の中の能
今回の公演では、人間国宝・大蔵流狂言方の山本東次郎先生が登場。観客を惹きつける狂言の技に会場が沸きました。そして、篝火が灯される中で演じられる能。炎の揺らめきが幽玄な雰囲気を一層深め、数百年の伝統を受け継ぐ演者の方々の至芸が、観客の心を静かに捉えて離しませんでした。




子ども仕舞も見事でした。毎年新たな受講生を迎え、継続する児童とともにわずか半年間の稽古を重ねてきた子どもたちが、400名以上の観客を前に堂々たる舞を披露しました。昨年は悪天候で本編が中止となる中、子ども仕舞だけは雨の中で発表を行いました。今年は晴天のもと、満員の観客に囲まれての晴れ舞台。子どもたちの晴れやかな姿に、会場は大きな拍手に包まれました。





運営の課題
一方で、運営面には反省が残りました。特別席の座席案内において、事務局側の事前準備が不十分だったことから、ナンバリングカードと実際の配置に食い違いが発生。お客さまに座り直しをお願いする事態を招いてしまいました。対応に時間を要し、その遅れが各所に波及する中、現場の状況を共有する体制も整えきれていませんでした。
素晴らしい公演内容と、担当してくれたボランティアの皆さんの臨機応変で誠実な対応に助けられた——それが率直な実感です。しかし、内容の力と周囲の支えに甘えるわけにはいきません。
地域の行事から「興行」へ
阿佐谷薪能は、3つの町会と地元企業、神明宮、地域の有志によって2017年に立ち上げられた地域の文化事業です。ネイバーズグッドは2023年から事務局を担っています。全国でも希少な屋外型能舞台で、人間国宝クラスの演者を招き、毎回満員御礼となるこの公演。地域で取り組むことを大切にしつつも、お客さまの期待値、集客規模、演者のアテンド——事務局に求められるレベルは年々上がっています。
地域活動としての原点を守りながら、興行としてのクオリティをどう両立させるか。来年の第十回に向けて、事務局としての次のステージが始まっています。

培われた地域文化、言葉で伝える
現在、阿佐谷薪能のドキュメンタリー映像を製作中です。シテ方を務める小早川修先生、阿佐ヶ谷神明宮の齊藤宮司、約20年にわたり子ども仕舞を支えてきた世話人の方々、そして今回初めて子ども能講座を受講した児童と親御さん——それぞれの視点から、この取り組みについて語っていただきました。







阿佐谷薪能は今年で第九回を迎えましたが、その前段となる子ども仕舞稽古は、阿佐ヶ谷青少年育成委員会の活動として始まり、今に至っています。当時の会長はすでに亡くなり、阿佐谷で薪能を行うべく立ち上げにご尽力いただいた方も旅立たれました。この文化を彼らの言葉で残し、後世へ繋げていくために——映像という形で収め、作品づくりに取り組んでいます。
撮影・編集は、最近さまざまな案件をご一緒させていただいている鬼澤健吾さん。当日の写真撮影は推しのカメラマン、トリー・セイコさん。最強のクリエイティブチームが、それぞれの媒体でこの公演を表現しています。今月の公開を目指していますので、どうぞお楽しみに。







Index ネイバーズグッド《2026年6月号》
Topicks
1年越しの開催、阿佐谷薪能
障害があっても、なくても Webラジオとユニバーサルタイムの現在地
「自分のためになる」が、まちを動かす 阿佐谷ジャズストリート、32年目の組織再構築
月間インフォメーション
今月のネイバーズ募集
デザインワークス
今後のスケジュール
まちづくりニュースピックス
あとがき(代表コラム)
不可抗力の時代を生き抜く

