「自分のためになる」が、まちを動かす 阿佐谷ジャズストリート、32年目の組織再構築

 阿佐谷ジャズストリートは今年で第32回を迎えます。地域に根ざした音楽祭として30年以上の歴史を刻んできたこのイベントが、いま組織のかたちそのものを問い直しています。きっかけは、昨年の痛い経験でした。

一極集中が招いた限界

 企画、渉外、実行委員会の運営、広告営業、チケット販売、販促物の制作——昨年はこれらすべての業務が事務局に一極集中してしまいました。スピードを欠き、遅れも生まれ、イベントを終えた後には体調を崩すほどのオーバーワークに。30年続いてきた祭りであっても、属人的な運営は持続可能ではない。その現実を、身をもって突きつけられた1年でした。

3部署制と事務局の継承

 この経験を踏まえ、今年は組織の再構築に着手しました。長年ジャズストリートを支えてきた実行委員の方々からアドバイスを受け、業務を大きく3つの部署——「企画・統括部」「運営部」「広報・地域連携部」——に分けました。業務内容としてはさらに細分化できるものの、縦割りの弊害を避けるため、あえて大きな括りにしています。

 もう一つの大きな変化が、事務局の刷新です。これからの事務局の中心を担うのは、20代から40代の現役世代。権限を移譲し、自発的に動いてもらう体制への転換を進めています。移行の過程ではちょっとした行き違いが起きることもありましたが、フォローし合い、連携を深めている最中です。

30年分の信用を「対価」にする

 権限移譲にあたって、代表の柴田が強調するのは「対価設計」の重要性です。

 「現代社会において、時間の価値が上がっています。無償の奉仕活動は時代に合いません」

 では、ボランティア組織であるジャズストリートにおいて、どんな対価を設計するのか。柴田が考えるのは、金銭ではなく、30年かけて先輩方が培ってきたブランド力、信用、地域とのつながりそのものです。そのネットワークを存分に活用してもらい、それぞれの仕事や活動に活かしてもらう。個人では実現できないことを、ジャズストリートという器を通じて可能にする——それが、このイベントに関わることの対価になると考えています。

Photo by kousukedoi_photography

情報量70億倍の時代に、同じマインドでは続かない

 資金不足と担い手不足により、長年続いてきたイベントが終了し、団体が解散を余儀なくされる——そんな流れが全国で加速しています。背景にあるのは、どの世代にも余剰時間が減っていること、物価高、そして人口減少。さらに、情報環境の変化は劇的です。総務省の統計によれば、世界のデータ流通量は1984年の月間17ギガバイトから2017年には月間122エクサバイトへと、およそ70億倍に膨れ上がりました。30年前とは、人々が日々処理する情報の量がまるで違うのです。

世界の月間データ流通量
出典:総務省「情報通信白書」(平成29年版)
1984
17 GB / 月
2017
122 EB(エクサバイト)/ 月
約70億倍
30年余りで、人類が扱う情報量はこれだけ膨れ上がった

 こうした時代の中で、30年前と同じマインドで地域活動に貢献し続けることは困難です。防災の考え方に「自助・共助・公助」というものがありますが、いま求められているのは、まず自助です。世界も個人も、自助の時代に入っている。だからこそ、地域活動の設計にも「関わることが自分のためになる」という回路が必要だと感じています。阿佐谷ジャズストリートの組織再構築は、その実験でもあります。


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