あとがき(代表コラム)
不可抗力の時代を生き抜く
5月に「商店街お助け隊 in 杉並」をリリースし、今月、個人事業主や起業したての方を対象としたバックオフィス支援サービスのリリースを予定しています。彼らの事務を請け負い、本業に専念できる環境を提供することで、生産性を上げてもらう。デザインや制作を生業としてきた会社が、なぜこうしたサービスを始めるのか。その背景には、これまでの活動を通じて感じてきた、さまざまな想いがあります。
まちをつくる人を支える
ネイバーズグッドは「まちをつくる」立場をとっていません。その地域に愛を持ち、貢献する人を支えることで、結果としていい街になる——そういうスタンスでやってきています。文化を築き上げる主役は、ミュージシャンであったり能楽師であったりといった表現者、文化人です。そしてそれは表現者に限らず、日常においては商店主であったり、その道のプロフェッショナルであったりします。仕事を通じてそうしたスペシャリストと接する機会が多くありますが、彼らが本業で発揮する才能と、それを取り巻く経営環境のギャップに、何度も直面してきました。
似通った街が増えていく
コロナを契機に、社会はますます不安定になりました。見通しの立ちにくい現代で、生き抜くための舵を切る難しさは増すばかりです。健全な競争の下での淘汰であれば、まだ納得もできる。しかし今は、不可抗力の側面が大きい時代にあると感じます。才能があり、努力を重ねていても、それだけでは防ぎきれない要因で消えていく人たちがいる。
都内の商店街の姿が象徴的です。物価や家賃が高騰し、個人商店は立ち退かされ、大手チェーン店が街を埋めていく。すると地域はコモディティ化し、どこに行っても似通った風景になってしまう。文化のない街ほどつまらないものはありません。そして文化を形成するためには、とてつもない時間が必要です。一度失われたら、簡単には戻らない。
生存の軸は、会計にある
京セラや第二電電(現・KDDI)を創業し、経営破綻した日本航空の再建を担われた実業家、稲盛和夫氏の著書『稲盛和夫の実学──経営と会計』から学びます。そこで書かれていることは、非常にシンプルなことです。しかし、それを実践に取り入れることが本当に難しい。特に、営業から仕入れ、制作まですべてを一人で担う個人事業者や、創業したての経営者。稽古や研究、そしてアウトプットに勤しむ表現者。社会の荒波が激しすぎて、目の前の対処で手一杯になってしまう。
生業における生存の軸は、会計にある。これは経営の規模を問わない本質だと、切に感じます。しかしその本質に向き合う余裕すら持てないまま、波に飲まれていく人たちがいる。ならば、その部分を私たちが引き受けることで、彼らが本業に集中できる時間と余白をつくれないか。それが今回のサービスの出発点です。
文化のある未来を
日本という国は、文化を持っています。それが当たり前のように思えてしまうのですが、日本ほどの文化を持つ国は意外と稀有です。留学に行ったとき、それを肌で感じました。街ごとに異なる祭りがあり、何百年も続く伝統があり、それを担う人がいる。この豊かさは、偶然に残ったものではありません。誰かが継いできたから、ここにある。
夢を持つことができ、それが叶えられる社会であってほしい。子どもが生まれると一層、そんな未来を願う自分がいます。文化は、勝手には残りません。それを担う人が生き残れる環境を、小さくてもいいからつくっていくこと。制作会社がバックオフィスの支援を始めるという一見遠回りに見える選択は、私たちなりの、その一歩です。
Index ネイバーズグッド《2026年6月号》
Topicks
1年越しの開催、阿佐谷薪能
障害があっても、なくても Webラジオとユニバーサルタイムの現在地
「自分のためになる」が、まちを動かす 阿佐谷ジャズストリート、32年目の組織再構築
月間インフォメーション
今月のネイバーズ募集
デザインワークス
今後のスケジュール
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